■2021年11月10日(水)
ゾンビ産業の寄生虫が何を言うか
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岸田首相にほしいサッチャーの道徳的勇気 愛されない覚悟で経済再建 よりによってここでマーガレット・サッチャー女史を引き合いに出すこともないでしょうに。もちろん新自由主義と保守革命を礼賛したいなら話は別ですが、ああいう独裁志向を道徳の勇気のと言う1970年代末からの英雄待望思想が現在につながっているという認識くらいは持ってもらいたいものです。まだしもポール・ボルカーあたりにならなかったのでしょうか。 もちろん増税と歳出カットによる財政再建というオプション自体はありです。当然それは大規模な規制緩和や規制の合理化、補助金削減を伴います。第三種郵便物制度や出版物の再販価格維持制度など、廃止項目の筆頭グループでしょう。むしろ紙ベースの媒体には重量当たりで定額の税金をかけ、ネットでのコンテンツ配信への移行を促進するべきという話にだってなりえます。またいわゆる文化振興事業も、スポーツを含めて全廃すらあり得ます。規制の筋から言えば、広告や戸別配達も、未成年の就労も絡めて一律に規制されるべきでしょう。ただしその結果は、まず確実に経済や国家財政の再建につながらず、内需の消滅による介護を含めたサービス産業の壊滅と生産基盤の崩壊、経済規模の縮小、そして国債発行高は減少するものの税収が増税分を上回って減少することで国債費の負担増大を招きます。また60年代とは事情が違うというなら、そもそもCPIのマイナス成長自体がここ30年に渡る異例の事態です。そして輸出をしようにも、今の日本には大量に輸出するものはありません。車は韓国と中国に抜かれてインドの猛追を受け、半導体は完全に輸入国となりました。鉄鋼、樹脂製品、もっと遡って繊維、セラミックス、どれもマジョリティを失っています。人口が増加している地域に低価格の普及品を売り込めるとでもいうならともかく、日本企業の製品はもはや小規模な市場に高級品を提供する以外の道を失いました。そしてもっとも「ガラパゴス」なのが新聞を含めた出版市場であり、日本語というマイナー言語に基盤があるため輸出のしようがありません。非英語圏がとっくに諦めて英語での出版に切り替えている動きにも追従し損ねています。非英語圏の書店に英語書籍が大量に並んでいる、エリートは母国語の新聞を講読せず英字新聞や調査会社のニュースサービスをオンライン購読している、それが世界の出版の現実です。そういう衰退産業にいるという自覚はないのでしょうか。いやまあ、国民年金だけになるのを覚悟したある種のヒロイズムなのかもしれませんけど。 ちなみに2010年現在の紙の消費量は26,323,735トンだそうで、グラム100円の税金をかけると2,632,373,500,000,000円、つまり2632兆円。国債など一発で全額償還できて余りまで出てしまいます。その代わりオンライン移行が進んでいない出版業界と印刷業界は壊滅しますが、まあ、おわコン産業なので受忍限度内でしょう。もう少しすると優良企業では電子帳簿法対応が十分に進むはずなので、数年見繕ってから実施すると生産性が低く投資マインドもない小規模企業の淘汰にもなります。マーガレット・サッチャー女史を称賛するというのはそういうことです。 | | |