■2018年11月27日(火)
2年の買い替えサイクルに依存しているメーカーは厳しいでしょうね
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スマホ分離プラン 国の危険な主張 まあ、答申の報道を見た時点でこの人はこう言ってくると思ってはいました。買い替えサイクルが安定しているからこそ、在庫コストも需要も見積もれるという面もあるので、それが大きく崩れるとなったらメーカーにとっては大きな問題でしょう。もともとスマホというのは一気に作って一気に売り切る製品なので、買い替えサイクルが長期化した場合、最悪在庫コストが転嫁されて製品価格が上昇することにもなりかねません。いままで目立たなかった長期運用中の故障も目立つようになりますし、2年もすると壊れる、修理費をぼっているといった批判も出てくるでしょう。それこそ局設備の更新で通信方式が変わるといった際には非難の大合唱もあり得ます。売り手にとってはあまりにメリットがありません。 ただし、寿命が短いことを前提に企画を立て、マイナーチェンジを繰り返して売り上げを立てるやり方が良いのかどうかは、一考の余地があります。繰り返しになりますがスマートホンというのはコモディティです。1台売ったから食っていけるという製品ではありません。最低でも数万台の桁で売っていかないと元すら取れないものです。記事中にある通り、それを通信契約の単価を上げることでカバーして割引きで売ってきたのが現状ですが、今のところ新機種の話題性で回線契約を売る・割賦契約を延長させるという形でメーカーと回線業者がお互い利益を分け合ってきたわけです。もちろんユーザーとしても、最新のハイスペックな端末を数年の分割払いで購入できる、端末の相性問題を気にする必要がないというのは悪くない話であるというのは、著者の指摘する通りです。一方で、規制改革推進会議としては、それではいけない、あるいはそれでは続かないという、問題意識なり危機感なりがあるように思います。正直規制改革推進会議という名前自体がどうにも偏ったもので、ただの問題意識でしかないのではないかという疑いを否定できないのですが、例えば西田宗千佳氏が「小寺・西田の金曜ランチブュッフェ」No.196論壇で論じているように、スマートホンの買い替えサイクルがそもそも長くなっている(もちろんこの論考はアップルについてのものなので、ハイエンド端末であるiPhoneについてだけ成り立っているのかもしれませんが)とすれば、規制改革推進会議の問題意識は当を得ており、そもそも回線使用料からのキックバックでブーストしているような買い替えサイクルには持続性がないということになります。だからと言ってスマートホンの供給側を即死させていいのかという意見はありうると思いますが、まあ、規制改革を旗頭に市場を焼け野原にするというのが真骨頂だろうという冷やかしは置いておくとして、メーカーはドーピングへの依存から脱却しないといけない(当然この場合メーカーがいくつか潰れるor撤退するのは計算済みでしょう: ただしその場合ほぼ確実に、高コスト体質の割にブランドイメージが弱い日本の会社が撤退する側になると思われます)、回線業者は新機種や(率直に言ってあてにならない)新通信規格の話題性に頼った回線契約の販売を止めないといけないということにもなるでしょう。もちろんこの論点には裏があって、回線会社と言えども今のところ技術開発投資を止めるわけにはいかないので、そう簡単には回線単価を下げられません。現在のいわゆる4Gでの技術開発投資やネットワークへの投資は一巡したところで、少なくとも日本国内であればたいていのところで4Gでつながりますが、だからといって後は維持費だけ払っていればいいかというと、それではじり貧になりかねません。例えばヨーロッパなど、いまだにある程度の僻地に行くと2Gにフォールバックすることがあります。電話であればそれで構わないのは事実で、規制改革推進会議としてはそれを良しとするのかもしれませんが、それこそメッシュが細かく見通しの良いところだけで5Gなり6Gなりが使え、少し郊外に出ると通信速度がガタ落ちになるという状況をよしとするのかどうか。新しい通信技術の普及と回線費用にそれなりのバランスを取ってきた結果現在の回線ネットワークがあるわけで(まあ、電電公社時代の設備投資の方向性や効率に問題がないとは言えないですし、NTT以降も色々間違いはしでかしてますが)、規制改革推進会議の言い分を鵜呑みにするのは危険でしょう。 | | |