日記

■2018年11月30日(金)  八つ当たりに見えるのは気のせいですかね
菅官房長官「4割値下げ」と「ショップの混雑を解消せよ」――ショップの淘汰で、混雑がさらに悪化するのは時間の問題か
タイトルだけ見ると内閣官房長官が「ショップの混雑を解消せよ」と言ったように見えますが、言ったのは石川氏にコメントを求めた週刊誌の記者です。
ユーザーが操作に困惑するようなスマホと理解に難渋するような契約を売っているショップもどうかと思うので、石川氏の非難は少々見当違いと言えなくもないと思います。個人の発行するメールマガジンの記事なので、何を書こうと本人の評判が落ちる程度ではあるのですが、どうにも大人気がない文章です。安くしろと言うけど安くすればサービスレベルが下がるぞという主張は、まあ、業界人の八つ当たりと言われても仕方がないのではないかという気がします。もちろん、菅義偉氏がどういう根拠で「4割は安くなる」と言ったのであれ、あるいは規制改革推進会議が何に基づいてキャリアは不公平な料金制度を作っていると判断したのであれ、事実上の規制によって料金を下げ、あるいは端末購入補助を廃止すれば、キャリアのサポート体制が縮小されたり、端末メーカーが事業縮小を余儀なくされたりする可能性はあります。とはいえ、ユーザーサービスを損なわない範囲で効率化が可能であるというのが政府側の見解ではあるわけで、専門家としての批判は、例えばそれが根拠のないものであると論証する形となるべきでしょう。何度言っても同じような見当違いの指導をしようとする政府・総務省には言うべき言葉が見つからない、という心境には同情しますが、だからと言って専門家としての態度を投げ捨てるのはおかしい。過去の言動から見て事情に同情的であるはずのない専門家にコメントを求めた週刊誌記者も職業人としてどうかとは思いますが、だからといってその間抜けな記者と政府の威圧的な指導を一緒にするのもおかしい。ましてやユーザーに使いこなしを求めるなど、専門家の傲岸不遜と言わざるを得ません。スマホは今や事前調査に怠りのない好事家向けのガジェットではなく、コモディティです。ついでに言えば、無知な消費者に売りまくったのもコモディティにしたのもキャリアとメーカーです。また無計画に契約数を増やし、便利だけ強調して回線を溢れさせたのも、後で気づいてオプション契約でお茶を濁そうとしてわけのわからない契約内容を作り上げたのもキャリアとアプリメーカーです。Simple is bestが頭に焼き付いた経済専門家がスリム化を要求するのは、彼らのメンタリティからして当然でしょう。現状を合理化する責任は通信業界側にあると思いますけどね。

■2018年11月30日(金)  得体の知れなささえなんとかしてくれれば
持つ楽しみと持たない楽しみ
山と積まれた本とCDは悩ましいものです(さすがに実家に埋もれていたLPレコードは捨てられたと思うのですが)。そういえば山田さん、いつぞは本を整理した話を書いておられたと思うのですが、あれは昨年末あたりでしたかね?
それはさておき、ファイルを含むデータ配信サービスや、いわゆる高音質メディアで配布されるバージョンにはどうにも抵抗感があります。一つは、もちろん落としどころというものだとは思うのですが、複製が欲しいならその数だけ買えという理屈です。そもそも許諾しているのはメディアに記録されたデータをそのまま再生・聴取する権利だとか、配布目的の複製かどうかなど判別できないとかいう主張は理解できないでもありませんが、NASやプレーヤーにデータを突っ込むことすらできないというのは不便で仕方がありません。理屈と言えば、アルバムだって一定の意図のもとに編成されているのでその通り聴いてほしいというのもあった気がします。作品という視点からは理解できますし、全体を通して聴くことで聞こえてくるものもありうると但し書きしたうえで、しかし聞き手が受け入れなければならない理屈だとは思いません。極論ではありますが、それこそ曲からサビだけ取り出して聴いたってかまわないと思います。もう一つは、配信者の得たいが知れないことです。別に得たいが知れないこと自体は構わないかもしれませんが、その得体の知れない相手に、連絡先やクレジットカード番号くらいならともかく、プレーヤーへのアクセス権や行動データの収集まで認めるのには抵抗があります。害と言えば宣伝が来るくらいだとはいえ、NTTの方からくる営業さんくらいには不愉快です。同期されなくてもいいからローカルからデータを出さないでくれと思うのは私くらいなのでしょうか。
とはいえ「提供されるものをひたすら聞き流す」という意味では別に配信サービスで構わないわけで、消費者としてはデメリットがメリットを上回ると思えば使わないだけの話なのですが。

■2018年11月29日(木)  社外取締役と株主総会が頑張ればよいだけではないかと
ガバナンスの失敗 ゴーン問題の補助線(4)
正直言うまでもないと思いますが、共和制ローマは内政を混乱させた挙句に帝政に移行しています。この手の暴論は最近よく見かけるものですが、特に企業統治においては、株主総会なり取締役会なりがこのあたりのコントロールをすることが制度上の前提です。制度はすでにあるわけです。また、有権者集団を想定せずにポピュリズム論を論うところがなんとも香しい次第で、1〜3までの池田氏の書きぶりから察するに生え抜きの取締役を含めた従業員か、広義の自動車産業関係者ないしは消費者と言いたいのではないかと思いますが、そんなあいまいな(たぶん独りよがりな業界人の頭の中にしかない)有権者集団を想定して制度論を語るなど、ブログあたりならともかく専門的なコメントをすべき媒体では論外です。まあ、「ビジネスオンライン」なんで許されるのかもしれませんが。60年代左翼学生でもあるまいし、素人丸出しの意見をさも正論と言わんばかりに持ち出すのは止めていただきたい(いや、政治制度論については当時の左翼学生の方が勉強していたかもしれません)。

■2018年11月28日(水)  やはり同じような悩みを持つ人は多いのだなと思いました
聴力を補完するヘッドフォンアンプを衝動買い
ファンディングが始まったのが3年前ということなので2015年の夏らしいですが、個人的に2010年の入院の後聴力低下を自覚し、たぶんこんなシステムでいいよなといったことを妄想していたのが2012年くらいなので、やはり同じ悩みを抱える人は多いのだなという感じです。さりげなくT教授がdisっているオーディオ評論家の皆さんは、やはり耳の衰えはあるでしょうが、経験による補正はある程度効くのではないかと思います。
オーディオ評論家よりも気になるのは音楽評論家というか演奏評論家の皆さんで、何か根強いライブ信仰、アナログ信仰があるように思うのですが、(デジタル)オーディオシステムでは再現できないというけど、そもそもそれ聞こえてるんですかと聞きたくなります。ホールを含めたライブ音響はスピーカーと小部屋では再現できない(ましてヘッドフォンとは全く異なる)とか、臨場感を含めたライブ体験は録音では再現できないというなら、まだわかるのですが。

■2018年11月27日(火)  2年の買い替えサイクルに依存しているメーカーは厳しいでしょうね
スマホ分離プラン 国の危険な主張
まあ、答申の報道を見た時点でこの人はこう言ってくると思ってはいました。買い替えサイクルが安定しているからこそ、在庫コストも需要も見積もれるという面もあるので、それが大きく崩れるとなったらメーカーにとっては大きな問題でしょう。もともとスマホというのは一気に作って一気に売り切る製品なので、買い替えサイクルが長期化した場合、最悪在庫コストが転嫁されて製品価格が上昇することにもなりかねません。いままで目立たなかった長期運用中の故障も目立つようになりますし、2年もすると壊れる、修理費をぼっているといった批判も出てくるでしょう。それこそ局設備の更新で通信方式が変わるといった際には非難の大合唱もあり得ます。売り手にとってはあまりにメリットがありません。
ただし、寿命が短いことを前提に企画を立て、マイナーチェンジを繰り返して売り上げを立てるやり方が良いのかどうかは、一考の余地があります。繰り返しになりますがスマートホンというのはコモディティです。1台売ったから食っていけるという製品ではありません。最低でも数万台の桁で売っていかないと元すら取れないものです。記事中にある通り、それを通信契約の単価を上げることでカバーして割引きで売ってきたのが現状ですが、今のところ新機種の話題性で回線契約を売る・割賦契約を延長させるという形でメーカーと回線業者がお互い利益を分け合ってきたわけです。もちろんユーザーとしても、最新のハイスペックな端末を数年の分割払いで購入できる、端末の相性問題を気にする必要がないというのは悪くない話であるというのは、著者の指摘する通りです。一方で、規制改革推進会議としては、それではいけない、あるいはそれでは続かないという、問題意識なり危機感なりがあるように思います。正直規制改革推進会議という名前自体がどうにも偏ったもので、ただの問題意識でしかないのではないかという疑いを否定できないのですが、例えば西田宗千佳氏が「小寺・西田の金曜ランチブュッフェ」No.196論壇で論じているように、スマートホンの買い替えサイクルがそもそも長くなっている(もちろんこの論考はアップルについてのものなので、ハイエンド端末であるiPhoneについてだけ成り立っているのかもしれませんが)とすれば、規制改革推進会議の問題意識は当を得ており、そもそも回線使用料からのキックバックでブーストしているような買い替えサイクルには持続性がないということになります。だからと言ってスマートホンの供給側を即死させていいのかという意見はありうると思いますが、まあ、規制改革を旗頭に市場を焼け野原にするというのが真骨頂だろうという冷やかしは置いておくとして、メーカーはドーピングへの依存から脱却しないといけない(当然この場合メーカーがいくつか潰れるor撤退するのは計算済みでしょう: ただしその場合ほぼ確実に、高コスト体質の割にブランドイメージが弱い日本の会社が撤退する側になると思われます)、回線業者は新機種や(率直に言ってあてにならない)新通信規格の話題性に頼った回線契約の販売を止めないといけないということにもなるでしょう。もちろんこの論点には裏があって、回線会社と言えども今のところ技術開発投資を止めるわけにはいかないので、そう簡単には回線単価を下げられません。現在のいわゆる4Gでの技術開発投資やネットワークへの投資は一巡したところで、少なくとも日本国内であればたいていのところで4Gでつながりますが、だからといって後は維持費だけ払っていればいいかというと、それではじり貧になりかねません。例えばヨーロッパなど、いまだにある程度の僻地に行くと2Gにフォールバックすることがあります。電話であればそれで構わないのは事実で、規制改革推進会議としてはそれを良しとするのかもしれませんが、それこそメッシュが細かく見通しの良いところだけで5Gなり6Gなりが使え、少し郊外に出ると通信速度がガタ落ちになるという状況をよしとするのかどうか。新しい通信技術の普及と回線費用にそれなりのバランスを取ってきた結果現在の回線ネットワークがあるわけで(まあ、電電公社時代の設備投資の方向性や効率に問題がないとは言えないですし、NTT以降も色々間違いはしでかしてますが)、規制改革推進会議の言い分を鵜呑みにするのは危険でしょう。

■2018年11月23日(金)  買う方も買う方だが作る方の感覚がわからない
【ロフト限定】2019年1月始まり プーチンカレンダー 卓上 リングタイプ
プーチン大統領です。いえ、一部で絶大な人気を、日本でも誇っているのは知っています。洒落もわかる方でしょう。しかし一国の現役国家元首をこのネタでカレンダーにするというのは…ロシア大使館あたりがイメージ向上策を兼ねて小遣い稼ぎをしているならまだわかるのですが。「宇野VS. 羽生」「プーチンの肉体美」……カレンダー商戦を追ったという記事で知ったのですが、正直企画を立てて実現まで持って行った人は勇者だと思います。

■2018年11月23日(金)07:23  まずもってFFのV型4気筒DOHCならどれでもいいとかいう指定がおかしい
普通のPCが普通に買えない
非常に身につまされる話でした。そもそも「こあいさんかごで、はちじー」と山田さんに聞こえたということは、おそらくサービス氏が言った言葉が親戚氏にそう聞こえたということでしょう。ネタをばらしてしまえば「こああいさんかごで、はちじー」、つまり「Core i3か5で、8G(B)」であるわけですが、山田さんのコラムを読むような人はCore i3がなにか知っているでしょうけど、普通の人は、例えば自分が会社で使っているPCのCPUが何であるかすら知らないのではないでしょうか。特定のメーカーなり製品なりに肩入れしないという意味で善意ではあるのでしょうけど、そこは主要なスペックをメモに書いて渡すくらいはすべきです。メモを読み上げてもらうしかなかった太古の時代とは違い、メモを写真に撮ってメールで送れば済むのですから。
それはさておき、たしかにNECのカタログラインアップにはCore i5やi3で8GBモデルはありません。カスタマイズモデルになります。8GBのメモリを積んでいるとなると17万です。プレーンなモデルがないのはそれでは差別化できないからでしょうし、最近OfficeがついてこないのはおそらくMicrosoftがOffice365への移行を図っているからでしょう。店頭モデルの主力がメモリ4GBであることも確かです。とはいえそれなりにパソコンを使っているユーザーからすれば、8GBはないと使い勝手が悪いというのは常識でもあります。4GBで大丈夫とか言ってなんか使い勝手が悪いと言われるようでは本末転倒でしょう。
「彼女同様に、以来10年間使い続けてきたPCを新たに買い替えたいというようなシルバー世代は少なからずいるんじゃないか。かなり確実な潜在需要だ。スマートフォンにも置き去りにされ、一通り使えるPCだけが頼りだからだ。
 そういう人たちに、あまり難しいことを考えずに、リーズナブルな価格で、リーズナブルな環境がオールインワンで手に入るような施策を、各社ともに考えた方がいいと思う。
 そうでなくては買い換えをあきらめるシルバー世代の続出だ。」
というコメントは全くその通りですし、安くても数万は取るものを売るのですから、メーカーは10年は使えるものを、ここで10万ないし20万出しておけば10年持ちますよと自信を持って言えるものを目指してほしいものです。「4年前のPCは使えば使うほど損」などと妄言を吐く前に、量販店で買い手に訴求できるまともな性能のモデルを出しましょう。スペック中やクラウドアディクトへの訴求だけが商売ではないと思うのですよ。

■2018年11月13日(火)15:55  さすがに2600円を原題では売りにくかったのだと思いますが
フランクフルト学派と批判理論 -〈疎外〉と〈物象化〉の現代的地平
おそらくですが、Oxford University PressのCritical Theory: A Very Short Introductionの翻訳です。同社のVery Short Introductionというシリーズのひとつなのですが、130ページの、いわば講談社学術文庫か白水社であれば新書あたりに相当する位置付けの本だと思います。逆に言えば、2600円で売る本ではないわけで、対象としているであろう高校生から大学1年生あたりの懐具合から言えば、1500円くらいにならなかったかと言わざるを得ません(大学進学を考えている中学生ならこれくらい読むかもしれませんが、そうであればなおさらです)。フランクフルト学派をまとめて論じて2600円で収まるのかと不審に思って、著者で検索したら原著を拾ったわけで、Kindle版なら806円です。誰が企画したのか知りませんが、こういう元々の企画を踏まえたとは思えない値付けはやめてほしいものです。「<疎外>と<物象化>の現代的地平」が本にかかってくるのか批判理論にかかってくるのか今のところまだわかりませんが(Very Short Introductionの趣旨から考えて後者だと思いますが)、現代社会や倫理の履修内容をトピック別に掘り下げた感じの印象なので、ちゃんとした辞書さえあればたぶん高校生でも原書で読めます。

過去ログ 2012年04月 
2016年05月 06月 07月 08月 09月 10月 12月 
2017年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2018年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2019年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2020年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2021年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2022年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2023年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2024年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月